2009年 12月 02日 ( 1 )

昔話と呪歌

 モノを書く人にとっては本文こそしっかり読んでもらいたいのでしょう。けれども、あんがい「まえがき」と「あとがき」が強く印象に残ることがあります。
 花部英雄著「昔話と呪歌」のあとがきは、近年読んだ中でも秀逸でした。一言でまとめると
“新幹線の切符を失くした話” なんです。ちょっとしたエピソードにしては、妙に延々と続く。ようやくオチが着いたかなあと思いきや、こんどはそこに対して自己分析が入る。ここでようやく本文との結びつきが明らかにされて、とてもすっきりする・・・という仕組みなんです。もちろん、本文を読んでいるからこそ納得がいくわけです。
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 肝心の本文は?というと・・・
★「子どもの肝臓を薬に」「米盗みの冤罪で死傷事件」といった陰惨な昔話がなぜ伝承されていくか
★歌詞の内容とは一見関係のない“おまじない効果”がある歌(短歌)がなんで生まれるのか
・・・といった感じです。
 古くから伝承されているものを「これはこういうもの」と真正面から受け止めるのもアリでしょう。しかし花部英雄氏の一連の著作は、もう一歩その背景に踏み込んでいくのが特徴です。「これ、結論出るのかなあ?」と不安に思いつつ読んでいくと、珍説・奇説を弄するわけではなく着実に仕組みがあぶりだされる。見事なもんだなあと思います。

 by げんぞう

「昔話と呪歌」
 三弥井民俗選書 民間説話の民俗学的研究 2
 花部英雄 著
 三弥井書店 2005年3月

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by torira | 2009-12-02 19:55 | 資料紹介 | Comments(0)