記念誌「船久保さんさ踊り」
2018年 02月 09日
紫波町の船久保さんさ踊り保存会から、保存会結成40周年記念誌「舟久保さんさ踊り」を送って頂きましたのでご紹介します。
船久保は紫波町の東側の集落です。
平安時代末期、12世紀ころは平泉の藤原氏が東北を広く支配しており、日詰に比爪館(ひづめのたち)を設けていた歴史があります。現在の紫波町佐比内や赤沢から算出される金などが藤原氏の栄華の一端を支えていたのだそうです。
記念誌「船久保さんさ踊り」では、赤沢地区に隣接する舟久保地区にも、古くから採掘され南部藩直轄でもあった女山金山があり、多くの人が出入りしたことが紹介されています。
記念誌は、そんな歴史や口伝や聞き取りのまとめから始まり、町内外のさんさ踊りとの交流を取材した記事、伝承活動の記録と続きます。衣装道具や掛け歌も採録されています。
興味深かったのは、ここにかつて念仏剣舞があったという伝承と残されていたササラ(大念仏系の剣舞で使われるびんざさら)の記録でした。
小形信夫氏は「さんさ踊り調査報告書」でさんさ踊りと念仏剣舞との関係について指摘していますが、改めて考えてみたいと思いました。
この「船久保さんさ踊り」は、編集スタッフの方々が丁寧に資料を渉猟し、記録を集め、練り上げて制作されたことがわかる記念誌です。
団体の歴史を語る際、当事者としてはどうしても古く盛りたくなりますが、こちらの編集後記で「資料の中で最も古い物は、明治24年(1891)の銘が残る太鼓の皮でありました。…残念ながらいつどのようにしてさんさ踊りが船久保に伝わったものか現時点では断言することが出来ませんでしたが、他の団体にみられるように記録があるほうが稀で民俗芸能はそういうものかもしれません」とあるように、全体に客観性と謙虚さを獲得されている点に敬意を表したいと思います。
もっか記念誌などをお考えの団体にとって、良い参考例になるのではないでしょうか。
by.事務局MA
by torira | 2018-02-09 22:25 | 資料紹介 | Comments(0)