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「気仙茶聞き書き集 おら家のお茶っこ」

藩政期から自家製のお茶を楽しんで来た気仙地方では、お茶作りの体験と技術が豊かに埋もれています。
あまり知られていませんでしたが、温暖な気仙地方では自宅の庭の一角に茶の木を植え自家用のお茶を作ってきた歴史があります。
手もみのお茶は約60年くらい前にほぼ途絶えましたが、震災前には自宅で摘んだお茶を工場で製茶して飲んでいたおうちが約70軒もあったそうです。
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雫石在住の焙茶工房を営む前田千香子さんは、かねてから気仙茶の復活に関心を寄せていました。そして震災後の2012年、陸前高田市米崎町の菊池司さんらと共に「北限の茶を守る 気仙茶の会」を立ち上げます。
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先頃「気仙茶の会」は、自前でお茶を作り飲んできた陸前高田市や大船渡市の皆さんの聞き書きをまとめた
「陸前高田・大船渡 震災を乗り越え未来につなぐ 気仙茶聞き書き集 おら家のお茶っこ」(1500円+税)という本を発行しました。
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自前のお茶がどんなに住民の心に深く根を下ろしていたか。
仮設集会所などでお茶会という支援活動を続けて行く中で、前田さんたちは沢山の方がお茶のことを生き生きと語る姿に出会い、「やっぱり気仙茶を復活させたい」と思うと同時に「これは書き留めておかなければ」と強く感じたそうです。

震災後はまず原発事故の影響を受けた茶の木を除染しなければなりませんでした。そして津波をかぶっても枯れずに残った茶の木の手入れを続け、また2013年に念願の手もみ茶を復活させます。
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昨年秋の「お茶の花見会」で撮影した小友町の茶の木。津波の被害から息を吹き返しつつある。

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気仙茶。「お茶の花見会」にて。

かつての気仙地方では畑の一角にかならずと言って良いほど茶の木が植えられ、無農薬のお茶作りが行われて来ました。樹齢100年以上かという古木も多く、品種としても貴重な在来種のお茶だそうです。

お茶づくりは手間ヒマのかかる仕事ですが、その分「おら家のお茶っこはおいしいよ。買ったのとは違うよ」という自負の言葉が出てくるのです。
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小友町の「気仙大工伝承館」のかまど。カマド神の下に炭をおこす土焙炉(どぼろ)、茶葉をもむ、もみ板と助炭(和紙を貼ったブリキの枠)がおかれています。
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もみ板を使ってお茶づくりを手ほどきする場面。「おら家のお茶っこ」43ページより。

全文143ページの中に、昔のお茶作り、食の思い出、年中行事、戦争の影、そして津波のことが気仙方言でつづられています。

「聞き書き」という手間のかかる作業は、最近では民俗分野でもあまり行われなくなっていますので、久しぶりにこういう本に出会いました。読むと自然にケセン語が聞こえて来る一冊です。
気仙茶ではなくても冷たい麦茶などをお伴にどうぞ読んでみてください。

発行・北限の茶を守る気仙茶の会
問合わせ・090 2999 2154 事務局・前田
E-mail kesencha*excite.co.jp(*を@に代えてください)

<取り扱い>
陸前高田市/伊東文具店、一本松茶屋
大船渡市/ブックボーイ大船渡店 ブックボーイサンリア店、ブックポートネギシ猪川店
盛岡市/さわや書店、shop+space ひめくり
花巻市東和町/にっち

 by.事務局MA
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by torira | 2015-07-27 14:50 | 東日本大震災 | Comments(0)

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