適当に。

 神楽に弟子入りして最初に与えられた役は、「笛」でした。師匠の笛をきいていると、決まったフレーズ2種類を主に使っているようです。なんべんかそのフレーズを吹く師匠の後ろに座って自分も真似しながら、手ほどきをうけました。しかし実際の演目ではそれだけでは間に合いません。「あとはどうすんですか?」ときいたところ、「まず、適当にな」。
 というわけで個々の笛方に任されている部分が多いだけに、好きなことをやらせてもらっています。しかし舞手にまわることが多くなると、自分が笛を担当しない演目というのも出てきます。このたび、そんな演目のひとつ「御神楽」で久々に笛を吹くことになりました。さて、「適当に」の部分をどうするか。

f0147037_004368.jpg 前半は定型のフレーズのうちゆるやかなものを使うことが多いが、それだけでは変化に乏しいので、それとなく展開させていきたい。本来は唄があることを想定して、その兼ね合いで節回しをつくっていく。現在は省略されている唄がどのように舞の動きに乗っていくのかを見極めなければならない。前半の終盤である「かまねぎ」は太鼓の拍子についてはそこまでと大きな違いがないが、舞手の動きは大きく変わってくるので、これに対応させる。後半は定型のフレーズのうち音数(≒指の動き)が多い華やかなものを全面的に使うことになるが、そのためにも前半は音数を抑えたほうがメリハリが出るだろう。後半は定型のフレーズが4小節で構成されており、8小節で舞が区切られていくとやりやすい。しかしそこは舞手によって様々になるのも面白いところ。今回の舞手は舞台を細かな歩き方で大きく使っているから、舞の区切りが11小節になるケースが多いことも想定しておきたい。「散米の手」は舞の動きがかなり忙しいが、そこで音数を多くすると逆に平板になるだろう。「米」をキーワードに、何か工夫はできないだろうか。たとえば通常は4拍で1小節と捉えるところを2拍目と3拍目の間であえて息継ぎをしてみようか。後半の中盤「ゆらゆら」で拍子は一転、ゆっくりになるが、そこも本来は唄があることを想定する。この唄は和歌形式ではなく五・五・七・七の唄だけに、笛の節回しも「上の句・下の句」という区切りが通用しないことに注意したい。そして再び音数の多い定型フレーズ。15分を過ぎて指に疲れがくるので、一音一音の音質と音量を大事にしなければならない。が、それ以上に囃子全体のリズムキープに心がけて音の輪郭がわかりやすいように、ここはあまり手の込んだことはせずわかりやすいものにしたい。終盤のヌキ拍子は、舞手の動きが流れがちなので、単調でもしっかり小節ごとに区切れる音にしよう。

 そんなことを考えてはいるのですが、本番では案外

     スー(-ε- …

だったりして。


 by げんぞう
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by torira | 2008-10-28 00:10 | 芸能 | Comments(0)

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