大事なことはきく

 権現舞を舞わせてもらうようになって、数年たちます。それまでの10年ぐらいも、面白く、かつ有難く、権現舞を拝見はしていました。が、「ぜひ舞ってみたい」という思いはあまりありませんでした。舞手としての心得や感覚にもこれまではあまり関心がなかったというのが実際のところです。
 しかし、舞うようになってみて、いくつか感じるところがあります。自分が舞っている神楽の場合は、出だしで幕をくぐる際に「静かに歩み出る」「勢いよく出る」といった違いが演目によってあります。それによって舞場へ出る前後の気の持ちようも様々です。ただ、権現舞は他の演目にはない昂揚感があります。しかも、それが2段階で来ます。まずは、幕をくぐって「めえだし(下舞)」を舞いだす段階。次は、権現様を持ち上げるとき。
 団体によってかなりの違いはあるかと思うのですが、自分が加わっている神楽では権現様を持ち上げる前後が、舞手にとってかなり特殊な気分になるようにつくられています。下舞を終えた舞手は、印を組んで権現様に拝礼します。そして権現様を受け取り、左手で軸木をつかむ。お客様に見られているという意識とは別の緊張感が高まります。そして、囃子方との間合いを見計らい、息があったところで左手を高くあげ、いよいよ権現様が正面を見据えるのです。
 ここから先は、できるだけ権現様に任して好きなようにやってもらいたいと思うのですが、そんな意識があるからか、左手で押し上げるというよりは、ほんの少しだけ権現様に左手がひっぱられる感じがします。そのうち、権現様にぶら下がって舞えるようになったりするのだろうか。と想像もしたりするのですが、それは何か違う気がします。「下で支えている」とか「ぶらさがっている」とかいうことではないようです。
 高低の感覚で言うと、「土台になって低い感じがする」というわけではありません。むしろ権現様の位置が鴨居よりも高くなり、自分もぐっと背が伸びた感じがします。そういえば、昔を知る別当さんの奥さんが、往年の名人による権現舞を
「××さんは背が高くて、つま先だって踊るもんだから、たいした大きく見えた」
と語っていました。これまで何人の舞手が、どんなことを感じながら権現舞を舞っていたのか。権現様のみが知ることでしょう。ならば権現様にきいてみましょう。
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 by げんぞう

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by torira | 2008-08-30 21:28 | お役立ち情報 | Comments(0)

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