えんつこ

 都南歴史民俗資料館(盛岡市湯沢)に収蔵されている「えんつこ」(えじこ)です。外径70cm,内径59cm,外高33cm,内高26.5cm。ワラを編んだ上に、部分的にゴザを張ってあります。ワラの芯には、なにか別の植物性の柔らかい素材が入っているようです。
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 以下は館長さん(軽米町出身)のお話。
 「えんつこ」は乳幼児を入れておくためのもので、「嬰児籠」が語源だという説が有力。保護者が仕事している間、そこに子供を入れておいた。家の中での作業の際には、えんつこの下に木の棒を入れて、片手で揺り籠のように揺らしながら仕事をする光景もよく見られた。
 かつては大家族だったので、家の中に何人も赤ん坊がいるということもあった。そうすると、えんつこも複数並ぶということもよくあった。
 えんつこの素材は様々で、木製の桶のようなもの、竹カゴのようなものなど、地域によっても特徴があるようだ。当館所蔵の2つはいずれも大きさ・つくり共に似通っている。詳しい出所はすぐにはわからないが、都南地域のものであることは間違いない。各地のえんつこと比べてみると、かなり大きいほうのものだと思う。ゴザの上張りなどもしてあるから、いい家のもので、どこの家でもこんな立派だったわけではない。そもそもこういう素材なので腐れてしまうことが多いから、あまり古いものは残らないようだ。
 いずれにせよ、えんつこはそのまま赤ん坊を入れても、この通りスカスカになってしまう。敷物を入れて使うのが本来。敷物には座布団のような立派なものじゃなく、自分の出身のあたりではワラを使っていた。今のようにオムツをまめに交換したりしないから、そのワラをどんどん取り替えていたというわけだ。冬は上から布団をかぶせたりして暖かくしてやった。
 手足が活発に動くようになってくると、えんつこから逃げ出さないように、兵児帯みたいなのでしばる。それより大きくなってくると首にからまったりしてたいへんなので、もうえんつこからは出してしまい、体に帯を結んで犬みたいに柱にくくってた。なんといってもイロリなどの火元に近づくのが危なかったので。
 外に持っていくときなどは、ヘビに気を使った。ヘビが赤ん坊を食うというのではなく、赤ん坊が暖かいから寄ってくるということなのだろう。また、えんつこの事故で多かったのが「猫」。猫が温まりに来てえんつこに入ってしまい、赤ん坊をおしつぶして窒息させてしまうことがあった。


 by げんぞう
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by torira | 2008-03-15 20:54 | 昔のくらし | Comments(4)

Commented by unice_321 at 2009-02-18 17:13
はじめまして、こんにちは。
「えんつこ」について調べていたらコチラにたどり着きました。
実は西荻窪にこの名前のパン屋さんがあり、名前の由縁を伺うと
「えんこつ」とはこういう物だと教えていただいたので・・・。パン屋さん
の紹介の記事を書くのに、こちらの記事を「えんこつ」の紹介として
リンクさせていただいてもよろしいでしょうか?
私の田舎は長野県ですが、こういったことを私も何かしたいと考えて
います。参考にさせていただきます。
Commented by blog管理人 げんぞう at 2009-02-18 19:35 x
オヤジっぽい人が中に入ってるなあ。
と、改めて写真を見てみて感じました。

さて、この時点ではスカスカですし、中の人は動きもしないし、そもそも大きめの作りの「えんつこ」なので、余裕たっぷりでした。
が、今では中の人も歩くようになってしまいまして、内高26.5cmでは平気で外に出てしまうことでしょう(また資料館に行って試してみようかな)。ということは、じつは「えんつこ」を活用できる期間というのはあんまり長くないんだなあ。と、しみじみ思います。
パン屋さんの名前とは、これまた・・・
そんなわけで、どうぞリンクしてご活用くださいませ。
私も西荻に行ったら寄ってみたいと思います。
Commented by unice_321 at 2009-02-28 13:28
こんにちは。先日は迅速にご回答いただきありがとうございます。
本日、えんつこ堂製パンについての記事を書いてみました。極簡単
ではありますが、こちらの紹介もさせていただきました。。
えんつこを活用できる時間は長くなくとも、やはり、少しでも近くに
子供を置いておきたいという親の想いがつまっているんでしょうね。
私の実家のある長野でもえんつこと似たようなものを藁で作って
いた(作っている?)ようです。名前はつぐらというようです。
前にも書きましたが、こういう文化をなんとかして、せめて文章と
してでも後世に残せたらなあと想います。
Commented by げんぞう at 2009-02-28 18:52 x
「くるみ」には、並々ならぬ思い入れがあるようです。
北東北の人々にとっても。
そのうち、そのへんは改めてご紹介できればと思います。

というわけで、ご紹介いただきありがとうございました。
パン喰いたい・・・!

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