斜め打ち

 胡四王山の蘇民祭の画像をご覧になった皆様、どういったことを感じられましたか?
 テングみたいなのがいる。
 松明を持った人がいる。
 ハダカの人があまり目につかない。
・・・いろんなことを感じられるかと思います。
f0147037_224681.jpg 私が最も目をひかれたのは、太鼓の人です。この人、太鼓を左腰脇に据えています。おそらく、
「この祭りで囃子を担当する胡四王神楽の人は、太鼓を左腰脇に据えて斜め打ちにしながら歩く」
ということなのでしょう。
 それが何のかというと・・・。
 胡四王神楽は、岳系の早池峰神楽です。早池峰神楽の中心的な存在と見られている岳神楽と大償神楽では、歩行しながらお囃子を奏する場合、太鼓を背負う人がいて、太鼓打ち(胴どり)はその後ろに立って太鼓を打つということになります。盛岡周辺の神楽でも同様のことをおこないます。
 中山峠以北の山伏神楽や青森県下北の能舞では、盛岡のさんさ踊りのように、太鼓打ちが自分のお腹正面に太鼓をつけて打ちます。
 ところが、陸中沿岸の神楽・大乗神楽では、その胡四王神楽のように太鼓を腰脇に据えて斜め打ちをします。早池峰系の神楽では、自分が知っている限りでは幸田神楽と成田神楽がこのようなことをします。成田神楽の場合は屋外で権現舞を舞う際もこのような奏法です。陸中沿岸の神楽でも、ショシャ舞・権現舞の際は斜め打ちで、同じ屋外でも七つ物系の舞では自分のお腹正面に太鼓をつけて打ちます。
 写真で見る限りでは、青森県平内町(津軽と南部の文化の境界領域という点が特殊)の権現舞でも斜め打ちをおこなっているようです。
 実際に太鼓をお腹正面に付けてみると、足元が見えなくてとても歩きづらいものです。なので、腰脇に太鼓をつけるのは歩くうえでの合理性を優先した結果かもしれません。ただ、伊勢の太神楽の映像でも同様のものを見たことがあるのです。伊勢の太神楽は基本的には「台車に鋲止太鼓と小〆太鼓を載せてこれを打ちながら囃して歩く」ということのようなのですが、同じ太神楽集団が小〆太鼓のみを手持ちして、これをやはり腰脇あたりで斜め打ちしながら歩く様子を映した映像を目にしたのです。これは北東北の山伏神楽にも何か関係あるのかなあ、と。
 まあ、斜め打ちは全国各地その他の芸能にも見られるものではあるのですが、伊勢の太神楽の影響と言うのは権現舞の様式全体を考えるうえでもちょっと無視できないものがあるんじゃないかなあなどなど思っています。
 
 by げんぞう
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by torira | 2008-01-19 22:04 | 芸能 | Comments(2)

Commented by げんぞう at 2008-01-19 22:19 x
 胡四王神楽と幸田神楽。斜め打ちというだけでなく、「木曾」で旅の客僧がオニギリを喰うあたりとか(オニギリの具には若干のちがいがあるようです)、類似点がとても気になる。幸田神楽の「講神楽」と言う特徴については調査研究が近年すすめらたが(ごくろうさまでした!)、その内容に万人が容易にアクセスできるとは言いがたいのが現状。幸田神楽があのような影響力と水準を保っている理由はこれらの調査結果からなんとなく想像できるのだが、いっぽうでその近隣の胡四王神楽があれほどの影響力と水準を保っている理由は、どうもはっきりしない。誰か教えてください。まあ、むずかしいともかく、胡四王神楽と幸田神楽いずれも大人気です。
Commented by のりさく at 2008-01-22 20:29 x
思わず、(深いなぁ…)と唸ってしまいました。
げんぞうさんの視点で見たら今の何倍も面白いんだろうな~!!と羨ましくなりました。
↑25日ですね。雪道かもしれませんのでお気をつけて。楽しみにしております♪
それから読書の感想をお読み頂いてるとは…恥ずかしい限りです(笑)

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