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「王の舞の演劇学的研究」

「王の舞の演劇学的研究」は、「とりら 第6号」にも執筆されている橋本裕之さん(追手門学院大学地域文化創造学部教授)の新刊です(もう3ヶ月たっちゃいましたが)。

「王の舞」は、福井県の若狭地方に伝承されている芸能。
裲襠(りょうとう)装束をまとい、鳥兜・赤い鼻高面をつけ、鉾を持って舞います。
祭礼の行列を先導し、田楽・獅子舞に先立って演じられます。
平安末期から鎌倉期にかけて京都・奈良の大社寺における祭礼で演じられたものが伝わったとみられています。
同じような芸能が近畿地方周辺にいくつか見られます。

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20年前に橋本さんが書いた「王の舞の民俗学的研究」は、美浜町の弥美神社(みみじんじゃ)に伝わる王の舞を中心に、その祭礼や地域社会・地域空間との関係、そして芸能史の中での「王の舞」の位置を明らかにしました。
これに対して本書は、4章にわたって様々な方向にテーマが広がり深まっています。
各章の特徴を順に言うならば、
①王の舞の「上演のされ方」を昔にさかのぼって探る
②「弥美神社の王の舞」以外の芸能を通して、王の舞の広がり方を追う
③王の舞という身体行為・社会行為と人々のかかわりを問う
④「王の舞を考えることによって新たに開かれるものの可能性」を、「王の舞を研究した人」を通して、示す
といったことになるでしょうか。


「王の舞」の所作も、それをとりまくお祭りのありかたも、岩手の芸能・お祭りとはずいぶん違っています。
そういう新鮮さを感じるもよし。
逆に岩手の芸能との共通点をみつけるのもよし。
色んな読み方ができるでしょう。
あわせてぜひ注目したいのは、上の特徴で言うなら「③王の舞という身体行為・社会行為と人々のかかわりを問う」というところです。
実際の章立てで言うと「王の舞の構築学」といタイトルの章。
とりわけ東日本大震災を経験し、芸能もお祭りもこれまでとは違った意味をもってきている今(内陸も含めて)、この章が、岩手の芸能に関心がある多く方々の目にふれてほしいなあと思います。
“芸能を習う側にも伝える側にも、芸能というものがこんな風な役割を持つんだ…”という驚きを感じられるはずです。

「王の舞の演劇学的研究」
橋本裕之著
A5判・上製・クロス装・函入り・総560頁
本体9,000円+税
ISBN978-4-653-04316-4


http://www.rinsen.com/linkbooks/ISBN978-4-653-04316-4.htm

 by げんぞう


by torira | 2017-06-20 21:43 | 資料紹介 | Comments(0)

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