手先は剣印ではありませんが

 盛岡周辺の山伏神楽では「猿田彦」という演目があります。たいていは、そのあとに続く「御神楽(みかぐら)」に先立って舞われます。天狗のような面をかぶった一人の舞手による演目です。囃子が途絶えずに次の御神楽に続くうえに、御神楽の舞手が舞台上に出てくるまで猿田彦の舞手も舞台上に待機している・・・ということから、二つの演目があたかもひとつのようにも見えます。
 実質的に、その日の神楽奉納の一番最初の演目が猿田彦になるということがほとんどです。最初に猿田彦をもってくるというセンス、いかにも各地の神楽にありそうだなあと思ったのですが、そうでもありません。盛岡周辺以外では、北東北でいえば八戸市南郷区の島守神楽ぐらいのようです。順序うんぬん以前に、猿田彦という演目があまりないのだそうです。

 で、大ヶ生山伏神楽では、私はもっぱら御神楽の担当です。なので、猿田彦を舞うことはまずないだろうと思っていました。ところが一年ほど前だったか、猿田彦を担当する方が体調不良につき、私にも猿田彦の出番がまわってくるかも・・・という事態に。で、数ヶ月間、猿田彦の練習をすることになりました。

 大ヶ生山伏神楽の猿田彦は、けっこうシンプルな動きのくりかえしです。自分はまともに練習したことがないものの、いつも幕裏で見ていっしょに動いているので、それなりに覚えてはいるつもりでした。ところがやってみると、なかなか難しい。順番を覚えるのはともかく、動きをそれっぽく見せるのがたいへんです。動きのタイプとしては、「天の岩戸」の鬼や「〆切り」、「山の神」などに似たものを含んでいます。早池峰系の神楽で「荒舞」という分類がありますが、それっぽい動きとでも言いましょうか。

 しかし、それ以外に、大きく足を開いて、低い姿勢になって、そこからぐいーっと伸び上がるような動きがあります。ちょっとしんどい動きです。その合間合間に、足を高くあげて歩みを進める動きもあります。これらは、抑制をきかした荒舞っぽい動きとは実はセンスが違うのだ・・・ということを掴むのに時間がかかりました。まあ、抑制のきいた荒舞っぽい動きも、大いに苦手なんですけどね。
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 猿田彦の練習をする効果というのは意外なところで出てきました。街中を歩いていた際に、鏡に映った自分の歩幅が妙に大きいんです。自分ではふつうに歩いているつもりなのに。なるほど、すげえもんだなあと驚きました。その後、結局は猿田彦としての出演機会はなく、歩幅も戻っちゃいましたけど。

 まあ、そんなわけで、跳んだりはねたり激しく踏みしめたりするわけではなく、かといって抑制がきいているというわけでもないのだけど、きっつい無茶な動きをする・・・と言うのが伝統的な芸能の中にはあるんですね。
 鼻高面でそういう無茶な動きをする・・・
 ・・・さて、この動きはどこから来たんでしょう。

 by げんぞう

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by torira | 2010-06-07 20:59 | 芸能 | Comments(0)

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