溶融

 というわけで、笛に臨む気持ちは重たいものがあります。
 これに関わって、ある伝書の記述を紹介しましょう。冊子「とりら」第3号の「盛岡周辺のシシ踊り」にも紹介した上鹿妻念仏剣舞の巻物「三巻」には、笛について次のように紹介されています。


一 笛ハ心ヲトロマセ口に用ル
(「岩手の民俗芸能 念仏踊編」
森口多里 著  
昭和43年3月25日
岩手県教育委員会刊 p.45)


ところが、別の翻刻では次のようになっています。

一 笛ハ心をとゝろませるに用いル
(「念仏剣舞  発生・伝播・変容と資料」
小形信夫 著
平成14年3月1日
東日本ハウス文化振興事業団 刊 p.92)


 というわけで、翻刻者によってまったく別の解釈になってしまいます。いずれにせよ、ここで求められているのは、あんまり尖った感じの笛ではないのでしょう。

 まあ、ふるさと岩手の芸能の場合は、巻物の記述内容を上演にあたって遵守しようという意識はそれほど強くないケースが多いようです。大成後の能で風姿花伝が重用されているのとは、わけが違うのです。しかし「トトロませ」だか「トロませ」だか、この言い回しはなかなかいいもんですね。

 by げんぞう

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by torira | 2009-04-25 19:44 | 芸能 | Comments(0)

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